2015年9月18日金曜日

【あおなご後日談112%】あおなごと海街Diary

劇団うさぎ112kg「あおなご解放論 ―From: Ms.Clambon」終演から1週間ほど経ちました。
少しだけ、後日談を紹介します。

あおなごは、5姉妹と死んだ母の話でした。
この話を思いついて、書き始めたのは5月の中頃で、
ちょうど、映画『海街Diary』(是枝裕和監督)が流行りはじめていました。
カンヌ国際映画祭で評価されたのが、そのくらいの時期。

海街Diaryは、3姉妹と、腹違いの妹が暮らしていく話でした。つまり4姉妹。

……ネタかぶってね!?

海街Diaryのあらすじを見たとき、
あおなごとコンセプト似てて、先にとられた!と思いましたし、
正直、あおなごが海街Diaryをパクったと思われるのやだなあ、と思いました。

しばらく敬遠していたのですが、
7月に仙台の小さい映画館で海街Diaryをとうとう観たんです。
フォーラム仙台。
ここで映画観るのは、前の年にリヴァー・フェニックスの特集上演していたとき以来でした。
早逝のシネマスター、リヴァーが大好きなんです。

『海街diary』に出演しているのは、
綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず 他、です。
女優が全員主役を張れるレベルの顔ぶれなんですが、
それぞれに立ち、調和していたのですごく見やすい。

主役を見せるための演劇とか(商業演劇には多いかな?)映画ってよくあるんですけど、
『海街diary』は決してそうではなく、
女優を魅せつつ、作品を魅せていました。

映画から、"作品のみせ方"を勉強させてもらいました。
目指したい雰囲気にも近くて。
パンフレットも買いました。
是枝監督が特集されていたSWITCHも買いました。
そのくらいはまってしまいました。
こんな美人姉妹いたらたまらんな……。

作っていく作品の雰囲気の共有として、
早い段階で、既成の近い作品を鑑賞しておくのは有効だと思います。
前作ナイチンゲールのときは、映画『17歳のカルテ』『シャッター・アイランド』を、
稽古初期の段階でメンバーにおすすめしておきました。

役者、スタッフは誰しもが演出とツーカーなわけではないので、
演出が言葉として伝えきれない部分を、参考作品が補完してくれるんです。便利。
私はよく映画を多用しますが(ライトに観られるから)、音楽とか小説でもいいと思います。

さて、お客さんから感想をいただいたときに、
海街Diaryとは言われませんでしたが、、、
ホームドラマ感がある、とコメントしてくださった方がいました。
『てるてる家族』(かつてのNHKの朝ドラ)を思い出した、なんても言われました。

ホームドラマといえば、向田邦子でしょう。
『阿修羅のごとく』が好きです。この作品は、4姉妹の話ですから、あおなごとも親和性が高い。
昭和のホームドラマ感、あたたかみが私は好きで、
また、演劇祭に参加するということで
様々な層のお客さんに向けて観られるようにしたいと思って、
あおなごは現代設定でしたが(AQUOSあるし)、向田作品の雰囲気を参考にしていました。

『海街Diary』をはじめ、あおなごにも共通させたかったことは、
お客さんとの"共感"でした。

チープな物言いをすると、「万人受け」と称されるのだと思いますが、
あおなごは多くのお客さんに楽しんでいただきたい一心で、
今の劇団うさぎ112kgにしかできない作品となりました。

今回はこのくらい。

いろんな後日談があるので、また書きます。へば。

おまけ
長女:イチコ役のおっちゃんは"綾瀬はるかがうさぎのマネをする"モノマネばっかりしていた。
にらめっこ強いんですよ彼女。ジャッジかまけん。

2015年9月16日水曜日

「あおなご解放論― From: Ms.Clambon」終演しました。

こんにちは。劇団うさぎ112kgの工藤です。

劇団うさぎ112kgはとうほく学生演劇祭2で、
「あおなご解放論― From: Ms.Clambon」の上演を終え、観客大賞をいただきました。
お客様の支えがあっての受賞です。
ご来場してくださった皆様、応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

今回の作品は、本当にたくさんの方々にご覧いただきました。
仙台、福島、盛岡、弘前など、地方を越えて、
さらに、地域や世代を問わず縦横に幅広くお客様に観ていただくことができました。
たくさんの陣中お見舞いもいただきました。
本当にありがとうございました。

とうほく学生演劇祭2はコンペティション形式で上演され、
審査員から作品に対して講評がなされました。
劇団うさぎ112kg「あおなご解放論― From: Ms.Clambon」は、

・ウェルメイドプレイで、まとまっている。
・総合力はトップ。完成度が高い。
・45分の脚本の中で姉妹の関係性を描けている。
・次女(トウコ)、三女(モモカ)の関係が印象的。
・その反面、話がまとまりすぎ、ていねいすぎる。
・役者に力量があるので、もっとチャレンジしてもよい。
・社会人劇団の中でも活動することができる、パッケージ化されているカンパニーである。

(以上抜粋)
などの評価をいただきました。
アフタートークや講評会において、
10年、20年続けていくような、中長期的な目線で演劇をおこなっていくことや、
学生演劇の範疇から離れて、社会人劇団、あるいはプロに近く、すなわちカンパニーとしての視点での評価をいただきました。
審査員の方々による、劇団うさぎ112kgの作品のそもそもの視座が、「学生演劇」ではなく「カンパニー」の地点にあり、
「学生演劇祭」というパッケージの中には留まらないようで……
その点については意外でとても驚きました。

実際のところ、
劇団うさぎ112kgが目指すところは学生演劇ではなく、長いスパンでの劇団の継続です。
しかし、主宰である私が学生でいられるのは今年限りで、
「学生演劇」の中でできることをしたい、その中での現時点の評価を得たいと思い、
今回の作品のクリエイションを行いました。

とうほく学生演劇祭2の審査について、
相対評価や、達成度評価ではなく、絶対評価であると前置きがなされました。
審査基準については、とうほく学生演劇祭2では審査員にすべて委ねられていたようですので、
クリエイションや団体としてのバックボーンは関係なく、
作品そのものを評価していただきました。

結果として、大賞の受賞を逃しましたが、
「観客大賞」という、お客様による点数審査での賞をいただくことができ、
劇団として成長することができました。

今後は、学生劇団というより、一介のカンパニーとしての活動へシフトしていきます。
学生演劇という枠にとらわれなくて良いと後押しされたようで、
ちょっと解放された気もして、もっと自由にクリエイションできそうな気がします。

また、あおなごの座組みも終演を持って解放されました。
みんな、お恥ずかしながら私の熱烈なラブコールで関わってくれました……
演出と役者の関係はもちろん、
役者同士、役者スタッフ間の仲も良くて、
毎度Twitterで赤裸々に楽しい姿をお見せしていました。
役者は、盛岡や福島、山形から稽古にかよって来てくれたり、
高校生の子は学校帰りに来てくれたり、
忙しい中を縫って、稽古に励んでくれました。
おかげで、物理的な距離は遠かったけど、めっちゃ仲良くなりました。

アフタートークで、審査員の方に「役者のこと大好きだよね?」って言われましたが図星でした。
恥ずかしい。

座組みも、縦(年齢)にも横(地域)にも幅を持たせた、新しいことができたと思います。
せっかくとうほく学生演劇祭に参加するんだから、とうほくをギュッとつなげてみたかったわけです。
制作部としても、カードビラを枚数限定で配布したり、
うなとにー。やももじりー。が出現したり、新しいことができました。

ていうか、こんな、生え抜きの東北の学生女優を集結させる試みも、後にも先にもないかもしれませんね。
でも、またあったら、誰かがまた実現させてくれたら、嬉しいです。

「あおなご解放論」のタイトルには、様々に意味が込められていますが、
そのうちの最後が、座組みの解放です。
そして、それぞれが次のステージへ向けて動き出します。

今後も劇団うさぎ112kgを、
あおなごに関わったメンバーの活躍を見守っていただければ幸いです。


少しですが、ウェブサイトの過去公演のページに舞台写真を掲載しました。
ぜひご覧ください。
劇団うさぎ112kgウェブサイト
http://u112kg.jimdo.com/

へば。

2015年9月5日土曜日

【あおなごコラム112%】演出離れ

こんにちは、劇団うさぎ112kg、あおなご演出の工藤です。
昨日、9/4(金)が、小屋入り前の最後の稽古でした。
前回から間髪入れず、今回は演出面のことを記録します。
本番直前の【演出離れ】について。


昨日の稽古は、あいにく私がすこぶる体調がすぐれなくて
ほとんど稽古を見れる状態ではなかったので、
役者の自主稽古、通しが行われたようです。

稽古後に、メンバーがビデオを持ってきてくれたので、
録画した通しの映像を観ました。

演出不在の通し。
座組みが少数なこともあって、観る専門の人がいない通し。
ビデオカメラだけが淡々と映像を記録している。

これがどんな意味を持つか……。

小屋入り直前ということで、稽古時間ももうほぼ残されていないのですが、
ここまでくると、演出の手から役者が離れることがあるのです。
今回のあおなごも、その時を迎えたな、と思いました。

うちの座組みに座長はいませんが、
座付きの役者が通しや稽古のフィードバックをリードしつつ、
客演の役者たちも遠慮することなく積極的に意見を交わす。
再度稽古をして自分たちで改善することができる。
演出がいないとき、役者が何をするのか、役者自身で何ができるか、というのは、演出にとっても役者にとっても肝要なことだと思います。

役者間の信頼関係が築けている証拠だと思いました。
全員が、芝居を良くしたいと思って臨んでいる。

演出の手から逃げて暴走するのではなく、
脚本や演出の意図を読み取りつつ、自分たちがどうするべきなのかが考えられる、
というのはなかなか難しいことだと思います。


役者やスタッフが自分なりに解釈して表現する余地があったほうが、
演出の想像のナナメ上を飛び越えてくれるような気がして、
そういう期待のもと、脚本の内容上、
役者・スタッフにもすべてを解説したり説明したりはしていません。
部分的には解説はしたりするんですが、
そういう"遊び"の部分があったほうが、表現の幅は広がる気がするんです。

だから、私は演出の頭の中で完結しない芝居作りを心がけています。

その芝居作りの最終過程が、
「演出の手から離れる」ことだと思います。
本番は演出が止めたりできないので、完全に役者やスタッフのフィールドです。
作品をみせるのは役者やスタッフ。
演出は口も手も出せない。
いままでの経験上、本番でようやく演出の手から離れたとき、
本番を観ていて歯がゆく思ったりしたこともありました。

私が演出の場合は、本番ではじめて演出の手から離れるのでは、遅いみたいです。

でも、本番直前、役者が演出離れをするのは、
実はちょっとさみしいんですよ。
親離れする子どもみたい。親の気持ちってこうなんでしょうか。

前作でも、これを経験しました。
いままで持ってた手綱をうっかり放しちゃって、急に手持ちぶさたになっちゃったような喪失感、寂しさ。
この感覚に陥るたびに、もう芝居なんかやんねー、って思うんだけどね。

でも、本番直前の演出離れを経て、再度全体を整えると、
不思議と、芝居のクオリティがぐんと上がることがあるんです。

だから、今回のあおなごも、
役者の巣立ちのときを固唾を呑んで耐えています。
一皮むけた「あおなご解放論」をお客様に観ていただけるように、
メンバー全員で舞台をつくっています。

へばまた。

2015年9月4日金曜日

【あおなごコラム112%】あおなご解放論のキーワード

劇団うさぎ112kgの連載、【あおなごコラム112%】二回目。

こんにちは、あおなご演出の工藤です。
先日、とうほく学生演劇祭2の演出インタビューを受けてきて、
作品について尋ねられました。
そのときにしゃべったことや、作品について考えていることをまとめました。
ぜひ、「あおなご解放論」を観る前に読んでみてね。

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あおなご解放論について。

この作品は、姉妹と母親の話です。
キーワードは、「姉妹」「ふるさと」です。

一つ目のキーワード「姉妹」
家族をテーマにしている…かというと、
実はそうでもなく、家族というよりは、姉妹に焦点を当てています。

現代では稀にみるかもしれない5姉妹の設定です。

母のプレッシャーから逃げた長女。
期待に応えられなかった次女。
望みを越えすぎる三女。
母に屈しなかった四女。
悟っていた五女。

こんな感じ。
家族というより、姉妹の結びつきの強さを感じます。

誰が主役ということも特になく、
ご覧になるお客様自身が、5姉妹の誰かに移入できたらそれでいいと思います。
あなたはどのタイプかな?


二つ目のキーワード「ふるさと」
学生演劇祭に劇団うさぎ112kgで参加するにあたって、
「東北」を盛り込んでみたいと思いました。
座組みの女優も、東北美人を集めてきたので(…)
といっても脚本書く私も青森県出身、大学で県外に出たとはいえ仙台住まいで、
外側から東北を眺めて書くことはできませんでした。

東北から出てはいないものの、物理的に距離のある東北。
ましてや、私の出身の津軽地方は、
同じ東北地方でもまるで文化が違い、特に言葉が違い、
仙台に来てから演劇を始め、方言矯正に苦労しました。

地方から都会に出て長く暮らしていると、方言を喋れなくなってしまう、忘れてしまう人もいる。
成人式などでそんな友達に会ったときは、
「~ただ、都会の絵の具に染まらないで帰って♪」
「恋人よ 君を忘れて変わってゆく僕を許して♪」みたいな、
木綿のハンカチーフ的な寂しさを感じてしまいました。
この感覚は高校時代にはなかなか味わえなくて、
大学に出て、友達が全国いろんなところにちりぢりになる過程を経て経験できるものです。

いまでこそSNSが発達して、Facebookとかで
昔の友達と簡単につながることができるようになったけど、
実際に会ってしゃべって感じるものは、SNS上とはまた違うものがあります。

演劇も似てて、
生で実際に観て、感じるものは映画とかテレビドラマとは違うんじゃないかな、と思います。
ぜひ一度演劇を生で観てみてくださいっ。

で、
話それたんですが、
地方から都会に出て暮らす、というのは、
「あおなご」では長女と三女が該当します。
県外の大学に進学する、という設定です。
東北だと、大学も少ないから、志望する分野が身近になかったりすることも多くて、
県外の大学や専門学校に進学することも少なくないような気がします。

地元から離れて大学・社会に出た人から、ふるさとの匂いが薄れていく寂しさとか、懐かしさも、「あおなご」の見どころです。

ふるさとの匂いが薄れても、帰ってくるところは、やっぱり地元なんですよね。
そして、「母」に源流がある。
「姉妹」という支流がある。
川みたいなイメージです。
だって、あなごじゃなくて、どっちかっていうとうなぎだし。(うなとにー。)

うなぎって川なんですよ。
あなごは海です。


以上のキーワードを根底に、お話はすすみます。

そして、作品に含むエッセンスとして……
若い人の人生の可能性について描きたいと思いました。

「一日は人生の縮図」という言葉があります。
それならば、45分くらいが青春時代かなあと考えました。
だから、「あおなご解放論」45分の上演時間の中で、
"若い日の縮図"を描きたいと思っています。

表現的には、女の子の魅力を存分に引き出したい。
劇団うさぎ112kgのコンセプトは
「うら若き女性を主体としたあざやかな演劇」なわけですから、女の子を魅せなきゃ。
愛嬌とか、繊細な機微とか、美しさとか、醜さとか、
ヒステリックなところロマンチックなところ現実的で不安定なところ
姉妹の結びつきの中で、その魅力が垣間見えると思います。


作品のみどころを演出として、推してみました。
女優やスタッフに言わせるともう少し違うかもしれません。

劇団うさぎ112kg「あおなご解放論―From: Ms. Clambon」
【Dブロック】
9/9(水) 17:00~
9/12(土) 13:00~
せんだい演劇工房10-BOX
ご予約はこちらから
http://ticket.corich.jp/apply/66804/004/

ご来場お待ちしてます。へばまた!