2015年4月16日木曜日

【うさぎのコラム112%】02 精神外科とロボトミー

春です。
大学も新年度が始まりました。
演出の私、工藤も大学4年になりました。

大学の4年って、中学校や高校の3年間と違って1年多いので、
字余りのような感覚がします。
月並みですが、後悔のないようにだけ過ごそうと思います。


うさぎのコラム112%は、
『ひとり、生理食塩水に溺れるナイチンゲール0.9%』を112%楽しむための記事です。
知ってるとより作品を楽しめる、かも!

初演まで半月となったので、
コラムにも気合が入ります(?)


最近、ある病院で精神保健指定医の不正取得が問題となっているというニュースを見ました。
「精神保健指定医」は、重い精神障害がある患者について、強制的な入院が必要かどうかを判定することができるお医者さんのことだそうです。

精神保健指定医のニュースの代わりか、ニュースの後ろに、
今回のうさぎ112kgの作品にも、
古い精神医学に関連する「ロボトミー手術」が登場します……。
あまり知られていないと思うので、ちょっとだけ紹介します。

少しエグいかもしれないので、注意(!)



その昔(1960年代)、
精神科(現在では、心療内科と言ったほうが正しいでしょうか)では、
脳に外科手術を行うことで、精神疾患の治療を行う方法が流行したことがあります。
いわゆる「精神外科」です。

精神外科で有名なのが「ロボトミー手術」です。
眼窩(がんか)からアイスピックのようなもので脳の前頭葉を切除する手術のことをいいます。
※眼窩…眼球のくぼみにあたる頭蓋骨の部分。
※前頭葉…人間の脳で、記憶や情動などをつかさどる部位。

この手術様式を、経眼窩式手術(けいがんかしきしゅじゅつ)といいます。

手術の様子は、眼にアイスピックを突き刺しているようにも見えます。
専用の器具も開発されたようですが、
もっとも、この術式が施されるようになった黎明期には、
アイスピックそのものを使っていた、という話です。

ロボトミー手術を行うと、性格の鈍化、判断力の低下など、
退行現象などが見られ、
もとの人間らしい生活ができなくなる患者が多数だったようです。

ロボトミー手術は、1960年代に画期的な手術技法だとして注目を浴びたものの、
患者が廃人同様になるケースも多数あり、医療倫理が問われました。

日本でも行われたことがあり、
ロボトミー手術を受けた患者が施術医師を殺す事件も起こってしまいました。

現在では、精神疾患には薬での治療法が確立しているため、
精神外科というジャンルは廃れました。
倫理的に、ロボトミー手術はタブー視されているようです。


下記ウェブサイトに、ロボトミー手術について詳しく掲載されています。

ロボトミーはそれからどうなったか:Timesteps




言葉でロボトミー語られてもなんじゃらほい、って思うかも。
映画作品を観るのもおすすめです。
ロボトミーについて取り上げている作品がいくつかあります。


映画 『カッコーの巣の上で』
(1975年、アメリカ)
監督:ミロス・フォアマン

カッコーの巣の上で - 作品 - Yahoo!映画

これはかなり有名な作品です。
60年代の精神病棟を舞台としています。



映画 『シャッター アイランド』
(2010年、アメリカ)
監督:マーティン・スコセッシ

シャッター アイランド - 作品 - Yahoo!映画

公開が5年前なので最近?ですかね。
主演がレオナルド・ディカプリオ。
解釈の仕方を変えて楽しめます。



『ひとり、生理食塩水に溺れるナイチンゲール0.9%』は、
看護をテーマとして取り扱っていて、かなり専門性が高い。
専門知識を取り入れながら、脚本を作っていきました。

その過程で、興味を持ったのが精神医学でした。
映画やドラマは、専門知識の入門としてとてもとっつきやすい。

演劇もそうなったらいいなー、なんて。



参考
『ロボトミスト : 3400回ロボトミー手術を行った医師の栄光と失墜』
ジャック・エル=ハイ著 ; 岩坂彰訳
(ランダムハウス講談社、2009)




劇団うさぎ112kg第一回公演
『ひとり、生理食塩水に溺れるナイチンゲール0.9%』

こちらからご予約できます!
チケット予約★CoRich舞台芸術!



2015.4.15
劇団うさぎ112kg 代表
工藤 麻美子

2015年4月5日日曜日

【うさぎのコラム112%】01 キャンディ・キャンディ

今回紹介するのは、
漫画『キャンディ・キャンディ』です。
ご存じでしょうか。
タイトルなら年齢問わずみんな知ってるかも。
あとは堀江美都子の歌で、知ってるかもしれませんね。
「そばかすなんて気にしないわ♪」

キャンディ・キャンディは、20世紀初頭のアメリカ、イギリスを舞台として、孤児院育ちのキャンディの青春を描いた少女漫画です。
キャンディは木登りかけっこが大好きなおてんばな女の子。
まさにじゃじゃ馬。
キャンディは孤児院の丘で出会った、スコットランドの伝統衣装に身を包んだ王子さまにはじめて恋をします。
引き取られた先でいじめられたり、
王子さまに似た貴族の少年、アンソニーに恋をしたり、
ロンドンの寄宿学校で学校一の不良であるテリュース(テリィ)にアンソニーのおもかげを重ねたり、
世界各地を転々としているアルバートに兄のような思慕を感じたり……
いろんな感情のうちに、青春を過ごしていくんですね。
ある日、アフリカにいるアルバートから手紙をもらったキャンディは、
看護師(原作表記では看護婦)が献身的に患者の世話をしていることを知ります。
キャンディが看護師という仕事を知るきっかけとなったのでした。
そして、旅先の人たちと触れ合ううちに、キャンディは看護師になる決意を固めていきます。
看護学校や病院でも様々な出来事に翻弄されつつ、看護師の資格を得て、働きはじめます。

キャンディはいつでも、根明(ねあか)に、人のために一生懸命に行動していました。
別に道徳的なことを言いたいわけではないのですが、
とにかく目の前のことに一生懸命になれる女の子でした。
目の前にいる人を喜ばせたい。
可能なことなら、リスクがあっても行動に移す勇気。
失敗しても、負けないタフさ。
そばかすでもじゃじゃ馬でも、笑顔で頑張るキャンディにみんな惹かれるのでしょう。
もちろん、読者も。
死に向き合うこともある。でも、看護師という仕事を通して、人と喜びを分かち合うキャンディに憧れた人もいるんじゃないかな……?
と思います。

で、ちなみに。
キャンディ・キャンディには、
ちょっとだけ演劇のハナシが出てきます。
ブロードウェイなんですけど。
テリィが、
「演劇は一つの魔術だと思ってる」
と、キャンディに述べます。
「人間の一生はきまってるだろ
けっしてほかの人物にはなれない
だけど 演劇ならなんでもできる」
シェイクスピアの戯曲に書き込みを入れ、
テリィは演劇の自由さを語りますが、
その後は俳優としての栄光と挫折を味わいます。
挫折してから、何にも縛られずに自由に芝居ができるようになったのは、
芝居のテント小屋で客席にキャンディがいるのを偶然見つけたからでした。
だれかに芝居を観てもらうって、大事なことなんですね。
そして、観てくれているお客さんがいることを意識する。
誰かのために、っていうのは、キャンディもテリィも共通項だったんじゃないかな。

他にも魅力的なキャラクターとか、紹介したい内容とかあるんだけど、
あんまり書くとキャンディ・キャンディのネタバレになるから……
機会があれば、一読してみてください。
私はいま21歳で、親がちょうどキャンディ・キャンディを読んでいた世代なんです。
だから、今の学生の親の世代は好きかも。
しかし、キャンディ・キャンディは年代問わず、少女のバイブルでしょう。
絶賛少女中のみなさんにオススメです。